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札幌大通高校を訪ねて

札幌市立大通高校は、札幌市内の定時制3高校を統合して大通公園11丁目付近の利便地に8年前に設置されました。

その構想を立てる審議会の座長を10数年ほど前にやり、何度か訪ねていますが、ゆっくり授業を見たことがなく、今回初めての授業参観でした。これも待っていてこうなったのではなく、自分からぜひと頼み込みました。ちょうど、この審議会の委員だったお二人が校長と副校長さん。どうぞどうぞということで安心して訪ねました。

ふつうの授業だと面倒をかけるかも、と思い、ちょうど予定されていた今井紀明さんが代表の教育支援NPO(D×Pという団体名)の特別授業に参加しました。

3年生が対象で、午前午後夜間の3部それぞれ40人くらいずつの参加のようです。今月来月と3回のプログラムです。このNPOは大阪が本拠地ですが、代表の今井さんは札幌出身で、その関係で去年から頼んでいるとのこと。大阪から今井さんなど3人が来札し、あらかじめ札幌在住の社会人ボランティアを募集し、そのメンバー(色とりどりでした)7,8人がファシリテーター(コンポーザー)として加わりました。本当は、ぼくもそのボランティアに応募しようかと思ったのですが、年齢制限が39歳で断念、5,6歳の違いならこっそりもぐり込めたでしょうが、さすがこの差では。と、今井さんに愚痴を言っておきましたが(笑)。

授業内容は、社会とのつながりを、人生のちょっと先輩が加わってグループで共に考えるといったもので、第一回目の今日は、「失敗なんてあたりまえ」のタイトルで、いろんな失敗の経験を語り合うということでした。

NPOで広く活動を重ねている蓄積でしょうか、今井さんのリードの仕方、そして5,6人ずつ分けたグループ討論のやり方は、さすがよく練られたものでした。形式張ったところが一つもなく、生徒たちの気持ちをよく汲んで進めます。不登校だった生徒が約半数という実態とその生徒達の心の葛藤などをよく踏まえているからでしょう。生徒達も最初少し固い表情でしたが、すぐこなれ、グループでの語り合いに真剣な表情です。段々生徒達の表情は素晴らしいものになりました。

大通高校の先生も、校長副校長以外に5,6人参観していましたが、ついその先生に、「生徒たち、すごく自然で真剣ないい顔をしていますね。ふつうの授業でこういう表情になりますか」と嫌みったらしい話かけをしてしまいました。こういうteasingまがいの発言は、ときに出る悪いクセです。最近は「いじり」と先生方も言うそうですが、これは良くないことだと自省を込めて強く思います。教師たる者、子どもをからかったりいじったりしてはなりませんね。表面での笑いの影で、ひょっとすると内面に重い膿が沈殿するかもしれません。

大通高校は、スタート当初から学校外との垣根を取っ払うことを基本方針にしていました。若者総合支援センターなど学校外のいろんな方々にどんどん学校に入り込んでもらっています。

「社会に近い」開かれた高校というのがこの高校の「校是」なのです。しかも口先でなく本音で。

学校に行きづらかった子も、心身に不調や障害がある子も、年がかなり上だけどあらためて高校で勉強したい人も(60歳の方が入学したこともあります)、外国人で日本語が十分でない子も、誰にも門戸を開き、かつその教育内容は、つねに「社会に近い」ところに置いています。

校長副校長先生は、何かに特殊化せず(例えば京都市でやっている公立の不登校生のための学校など)こういう幅広い受け入れを方針にしたのは正解だったと述懐していましが、その通りでしょう。

指導要領上必須の国語、数学等の科目以外に、100を超える多様な「学校設定科目」があり(生活国語、サイエンス実験入門、生活に生きる書、よくわかる商業と経済、アニメーション技術、さっぽろ探究など実に多彩)、生徒は大学と同じように単位ごとに自分が好きな科目を履修します。

こうした仕組みのなかで生徒たちは伸び伸びと高校生活を送るようで、この高校には細かな校則はなく、「「よき社会人としての振る舞いと同じように」というのが原則」だとしています。校舎内にも、「静かに」とか「走るな」とかの掲示物は皆無です。校長副校長さんの話では、最近はこれで十分ルールは守られていて、深刻な問題行動はほとんどないとのことです。生徒たちの多様さが本当に大事にされ、学校にそれぞれ「居場所」を見つけているのでしょう。ぼくは元来、「多様性」とか「個性化」などの安易な強調には批判的なのですが、ここで行われている個々の生徒に即したていねいな教育の在り方には、実質的意義があると思います。

今回の訪問で知り驚きましたが、基礎学力の形成にもきちんと目を向け、去年から小中の学習の復習授業も学校設定科目としてやっているとのことでした。希望生徒はたくさんいるそうです。その場合、ドリルを一人ひとりの学力に応じてどんどんやらせているとのこと。こういう積み重ねがなければ、いくら教科の授業を工夫してもまともな学習にはならないということだそうです。その通りでしょう。

この他、個々に進路などの悩みや相談は無数にあり、スクールカウンセラー3人では対応しきれず、教育大学生などのボランティアでの応援を頼みたいところだとのことでした。

校長さんが会話の途中に淡々と話していましたが、今年初めて北大に3人が合格したとのこと。そういうことが学校の目標ではないが、教育の結果として好ましい結果が出始めていると見ていいでしょうね。

おそらくこの高校は全国でも希有な、北海道として誇るべき高校教育を実らせつつあると言えるとあらためて確信しました。問題は、いわゆる進学校や名門校が、改革が進まず、旧態依然の教育に止まっている場合が多いことですが。

今年開校した開成中等教育学校と併せて、札幌市は見事な中等教育のモデルを生み出していると言えるかもしれません。大通高校と開成中等教育学校は、これからの教育のいわば車の両輪みたいなものですね、と最後にエールを送ってきました。

ちょっぴりとはいえ、その両方の設置構想に関わった者として、格別の喜びを感じつつ学校をあとにし、しばし素晴らしい初秋の大通公園を散策しました。

 (2015年10月19日)
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Tag:教育  comment:0 

プロフィール

村山紀昭

Author:村山紀昭
長い間、北海道教育大学で哲学を教え、1999年から私大を含めて10年間学長をつとめました。
退職後、教育と福沢に関する月1回の勉強会「教育人間塾」を続けるとともに、文科省の委員会委員や北海道教育委員会のアドバイザーとして、教育政策とくに教師教育政策に関わってきました。
平成26年4月からはフリーなスタンスで教育や福沢について思索する日々です。
趣味は音楽とオーディオ、クラシックと初期ジャズが好き。

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