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資質向上が難しい学校のいまー退職教員からの手紙

[ 40年近く、東京近辺の大都市で中学の教師として生徒指導面で活躍し、去年定年退職した元のゼミ生から、学校現場の生の体験を基に、教師の資質向上の難しさを切々と訴える手紙を受け取りました。学校の現状を伝える貴重なレポートとして、ご本人の了解を得て紹介します。なお、最後のほうにある「下世話」との表現は、あまり適切ではありませんが、彼流の思いがこもったものと受け止めてもらえればと思います。]

僕自身が勤めてきた中学校も含めて、生徒指導の仕事上、普通の先生たちよりも相当数の学校を見聞してきましたし、この20年間は各地の学校を回ってきました。その上での感想ですが、40年近い前に僕が教員になったころと比較すると、教師集団の最大の違いは、教師集団の助け合い(鍛え合うことも含めて)がほとんどなくなったことです。個人個人の教師が一人で学び、一人で成長し、一人で教師としての理想(理想でないものも含んで)をつくらなければいけなくなっているということです。ということは、学ばないで、成長しないで、理想も描けずに年数を重ねる教師が、とても増えたことです。
         
この理由はとても複合的なので難しいのですが、

(1)学校に任せられることが肥大化したこと(たとえば、人権教育・情報教育・ 福祉教育・金融教育・キャリア教育・国際理解教育・環境教育などの数え切れない〇〇教育、生徒指導上の問題など)、           
(2)実務的な書類の作成、報告書の作成などの事務仕事が増加してきたこと、
(3)先生に任せておくという時代から、学校に要求する時代に変化し、親への対応も増えてきたこと、                     
(4)教師のいわゆる「教師観」「職業観」も個人主義的なものへと大きく変質してきたこと、

などたくさん挙げられます。いずれも時代が進めば当然のものもあります。共通しているのは、そのために教師間の意思疎通の時間がなくなってきたことです。だから、ますます教師は初任の時代から、勝手に一人で成長しなければいけないのです。

教師の仕事は「職人」の世界と似ていて、本を読んでも先輩の講釈を聞いてもだめなんです。とても、育てるまでが大変なのです。見よう見まねでまねをしながら、その瞬間瞬間で学ぶものなのです。鉄職人が弟子に見せることもなく、一日の終わりにまとめて講釈しても、弟子は鉄を一生作れないでしょう。今や若い教師は親方の仕事ぶりを見ることもなく、しかも先輩教師が講釈する暇さえないのが実態です。

企業と同じで、即戦力が喜ばれるようになったのです。そうすると、校長も主任クラスも手間がかからず楽です。ところが教育においては(ここは企業とは違うのか同じなのかはわかりませんが)、即戦力というのは始めから結局そこそこの教師ということですから、そつなく問題も起こさず、管理職にも忠実で、目立つこともせず、新しい何かに取り組むこともないということになります。「出る杭は打たれる」ですから、常に周囲に合わせながら、無難な道を歩む。 職人の世界では、まず親方の下で何年か修行し、原理原則を学びます。その上で工夫をして独自の物を作り、親方を乗り越える場合もあります。

次に昔の教師集団との最大の違いは、教師集団に核となるリーダーがいなくなってきたことです。これが一番社会を反映していると思います。リーダーは率先するべき実践と理論が必要です。実践するための決断力も問われ、責任も問われることになります。こういうことを嫌い、避けて通る風潮が強いのです。それよりも無難に続けたほうが良いということです。本来、その最大のリーダーは管理職なのですが、実は管理職は無難な教師の側からしかなれない場合が多いのです。教育委員会も無難な教師が良いのです。

それに校長になるためのステップが余りに馬鹿げています。30代の半ばには主幹教諭(または統括教諭)、30代の後半には学年主任になって、40代には教務主任になって、そして副校長(教頭)になってと。結局、学年主任からは担任を外れますので、学級経営もなくなり、生徒と直接相対することもなく、親との直接対応もなくなるのですから、教師最前線時代はわずかに10数年という出世頭も多いのです。これではとても指導力など発揮できるわけがありません。特に委員会の指導主事に35歳前後でなった人は、その後は教頭か校長で必ず現場に戻るのですから。今のままでは文科省がどんな施策をもってしても、多分無理だろうなと思っています。10数年しか教育実践をしていない人間が、指導力がないのは当然ですから、どんなに校長の権限を増やしても、その権限は生徒や若い教師を導く指導力に発揮されず、委員会のスピーカーとしての権限の発揮になっていくからです。

もう一つ。無駄な会議が少なくて愚痴がこぼせる井戸端会議のできる学校が減ってきました。個人個人がパソコンで文書をつくり委員会に送付するとかになってしまいましたが、昔なら係がまとめて紙で送るから、その時に係に愚痴をこぼせました。

石川県の金沢市のある女性の先生が言ってました。「私はこの学校に来て5年になりますが、あの先生の子どもはいくつなのか、保育園はどうしているのか、そもそも結婚しているのか。そういうことも何も知らない同僚の先生が何人もいるのです。だから、その先生が学級で困っていることがあっても、助けられないのは当然ですよね。親密感も何もないんですから。」

なぜそうなるのかと聞いたら、「だって、放課後になったらただ黙々とみんなパソコンに向かって仕事をし、話しかける雰囲気じゃないですよ。どうせ4月には転勤ですし、どうでもいいやという感じです」。教員の転勤の回転も早くなってきたということもあります。

ここまで書いていると、「何だ、君のただの愚痴だよ」と言われそうです。村山先生とこんな話がしたいと思っていましたが、先生がこのようなまったく下世話な話に興味関心があったということに驚いています。哲学は、下世話で世俗的なことには縁がないというのはやっぱり僕の偏見でした……。

下世話ですが教育問題はどれも、結局は現場の問題を抜きには無理なんです。教育学者は掃いて捨てるほどいますが、現場に影響力のある人はあまりいません。特定の教育学者や心理学者には迎合しないのが、僕の「生徒指導」論です。何から何までを支持して賛成するというのは、 “信奉しろ”と言われていると同じで、どうも僕にはできませんでした。
 
どの民間教育団体に所属しても、異論や疑問が出てきて、違う道を歩んでいました。ただ、41歳の時にある出版社が発表の機会を与えてくれて、そのお陰で今も、「荒れている学校」のコンサルタントをしているわけです。今は時間的に余裕がありますので、メールや電話で来た質問や対策に回答する日を送っています。メールで回答できない難問は電話で、電話でも埒があかない問題は直接訪問(交通費と食事代のみ)して、あちこち行っています。

こうした下世話なことに関心を持ち心配するという村山先生にも頭が下がるし、僕の教師像の中には、昔からそうだった先生の影響があるのです。「大学に勤める、下世話なことに無縁な哲学者が面倒見が良いのに、一介の中学教師が子どもを見捨てて良いのか」と時々思っていました。

それにしても長くなってしまいました。現場を知っていただきたいという思いと、退職後の思いが入りつい長くなってしまい失礼しました。(2012年4月16日)
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Tag:教育  comment:2 

Comment

村山紀昭 URL|Re: Re: Re: タイトルなし
#- 2012.05.20 Sun14:14
コメントありがとうございました。

> この学校の現状分析、全くその通りだと思います。私の思いと全く同じなのにびっくりするぐらいです。

そうなんですね。かなり多くの方から共感の感想が届きました。僕自身は、こういう実態をふまえて、何とか若い先生方がきちんと育っていくシステムを作っていければと思っています。

>今、若い先生方との勉強会をやっていますが、昔の職員室的雰囲気で、愚痴有り、悩み有り、時々研究と楽しく学ぶ会にしようと思ってやっています。

学校の中でのそういう当たり前の環境作りが大事ですね。健闘をお祈りします。
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#- 2012.05.20 Sun09:02
はじめてコメントします。この学校の現状分析、全くその通りだと思います。私の思いと全く同じなのにびっくりするぐらいです。今、若い先生方との勉強会をやっていますが、昔の職員室的雰囲気で、愚痴有り、悩み有り、時々研究と楽しく学ぶ会にしようと思ってやっています。
 大阪では、今後、ますます教師間の絆が切られ、これからの新任の先生など苦労が絶えないだろうと心配します。心の病で辞める若い先生が出てこないように一人でも助けられればいいなと思っています。
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プロフィール

村山紀昭

Author:村山紀昭
長い間、北海道教育大学で哲学を教え、1999年から私大を含めて10年間学長をつとめました。
退職後、教育と福沢に関する月1回の勉強会「教育人間塾」を続けるとともに、文科省の委員会委員や北海道教育委員会のアドバイザーとして、教育政策とくに教師教育政策に関わってきました。
平成26年4月からはフリーなスタンスで教育や福沢について思索する日々です。
趣味は音楽とオーディオ、クラシックと初期ジャズが好き。

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