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「インターン制」の報道に関して

4月14日の毎日新聞朝刊で、教員養成制度について、自民党内で、まず「『准免許』を与えて学校に配属、数年の試用期間を経た上で本免許を与える」「インターン制度」案を固めたとの報道がありました。

かつ、筆者も加わっていた、昨年8月民主政権下でまとめられた中教審答申の「修士レベル化」について、「事実上凍結か」とあります。

これに関して、まだ正確な状況は分かりませんが、とりあえず私見を書きます。

今回の案は、昨年末の選挙公約にもすでに出ていた方向で、それが新政権のもと与党の文教政策関係者の中で固まったということのようですが、是非は別にして実際にこの方向で制度・法改正をするのにはかなりの難問があります。

昔何度か出ていた「試補制」に近いものかと思われます。しかし現実化は、財政措置や法制度上そう容易ではありません。(なお「試補制」はドイツで長くやってきている制度です。大学卒業後国家試験を経て、2年間、教育行政機関に置かれた訓練コースでおもに学校実習をした上で正式採用するというもの。しかししばらく前から、試補期間の中身・質が問題になり、修士化の方向に見直しされ始めています。これは民間企業などのOJT見直しと軌を一にするものとも言えます。)

法制度的には、免許法上、「準免許」と「本免許」を、教員の身分、資格、教育課程上の役割、教員組織の中での位置づけを的確に規定することはなかなか難しいところがあります。準免許の間(3年から5年)、現行の1年間の「試用期間」と同じ扱いにするのか、一定今のままでなく権限や責任について限定するのか、膨大な数のすでに任用されている教師をどうするのか、そのまま「本免許」に切り替えるのか、であれば、教員の資質チェックは新採用教員にしか及ばないのではないか、免許法上で「準免許」「本免許」に変えると一気に全国で適用され、実際の運用上教委、学校等で膨大な作業と予算措置が必要になるのではないか、などの難問がすぐ出てきます。

アメリカでは、州によって似た免許制度がありますが、それは上位免許への上進制(研修によりステップアップを義務付ける)として制度化されていて、今回の「準免許」「本免許」とは違います。

これらの詳細は今は措くとしても、問題の核心は、インターン教師を補ったり指導する教師の確保のための膨大な財政措置と実質的な体制なしには、つまりは準免許の間、学校現場で誰がどう資質を上げる指導をするのかの体制なしには、「単なる選別制度」で終わってしまということです。さらに、すでに始まっている大量退職大量採用の状況の中、現行の1年間の試用期間の単なる延長になり、結果的に「選別」も形の上だけということもありえます。

制度化が用意周到に行われなければ、毎年3~4万人採用される教員について、むしろ膨大な徒労と無駄な仕組になりかねません。つまり選別もあるとして大量に3年間雇いながら、実際には予算不足で担任までさせ、結果的には辞めさせたりの「選別」にもならないかもしれない。ざるでしっかり選り分けると大がかりな仕掛けを作りながら、実際に選り分けられたものはざるにかける前とたいして異ならない。それなら、そもそもそこに流す材料を最大限良質なものにしていった方が余程いい、ということになりかねません。

また、今回の「インターン制」では、「期間中、学校長が勤務態度や授業の状況、課題への対処能力を見極め、基準を満たしたと判断すれば、教委から『本免許』が交付され」るとされ、記事は「『教員の質』について、校長・教育委員会が責任を持つ点が特徴」としていますが、資質向上の中身が伴わず、結局教員として継続ということであれば(事実上それが大多数になるでしょう)、やはり大仕掛けなわりにまさに有効性を欠いたざるのようなものと言わざるをえません。個々の校長にとっては、自分なりに鍛え厳しくチェックしたのだから有意義と思われても、全体としてみれば事実上、資質向上だけでなく、当初意図の「選別機能」も発揮され得ないのです。

要するに、教員の適格性を厳格にするといっても、少子化と大量退職・大量採用の時代、特定の段階で選別機能つまりネガティブ機能だけを発揮させようとしても無理なのであって、ポジティブ機能である資質向上策がいずれにせよ不可欠なのです。

さらに言えば、以上の法制度上の問題がある程度クリアーされるとしても、こうした教員の免許状の扱いがそもそも保護者や世論から理解と支持が得られるものでしょうか。大事な公教育で、3年後正規教師になれるかどうか分からない教師に担任されたり教育されたりすることが、納得されうるものでしょうか。

現在も期限付き(多くは1年)フルタイムの新規採用者の大幅増で、同様の危惧が生じているのですが、今度は、新規採用のすべてが似た環境に置かれることになってしまうのです。例えば、教員30人の学校で、その内少なくても5〜6人、場合によっては3分の1の教師が準免許や期限付きフルタイムの教師ということになりかねないのです。実際には準免許制になると期限付きフルタイムとの区別の意味が薄れますから新採用は全部が事実上現在の期限付きフルタイムと同じようなものになるとも言えます。

こうした不安定な身分の教師による教育が制度となって拡がることが、公教育の質の向上と言えるものでしょうか。国際的に見ても、極めて変則的な制度となってしまうでしょう。

ある若手の小学校の先生が、「全体を高めるのではなくて、今を低くして(准免許)スタートさせるというのは志が低い」とツイートしていましたが、まさにそういう志の低さの「危うさ」を感じさせます。


翻って、昨年8月の中教審答申の「修士レベル化」は、諮問当初の「6年制」という民主政権の方向付けもあり、かなり誤解されて報道されました。繰り返しいろいろなところで書きましたが、答申は、単純な6年制や、修士にすれば万事解決というものではまったくありません。

財政状況や教員養成大学、教育委員会、学校現場の現状をふまえ、「段階的に」多様な方法で長期的な見通しで修士レベル化を図ろうとするものです。

かつ、その必要性の前提には、フィンランドなどの直輸入でなく、この20年以上行われてきた法定の初任者研修や10年目研修などにも拘わらず、学校現場だけでの資質能力向上には限界があるというリアルな現状認識があります。もう始まっている大量退職大量採用で、学校現場では教員の年齢構成も大きく変わりつつあり、新任や若手教員を育てる機能が大幅に低下してきているのです。

そういう認識に立って、答申では、すでにいくつか先進例のある「学校拠点方式」、つまり学校に勤務しながら、大学ー教育委員会ー学校が緊密な連携をして若手教員の資質能力を確実に上げる方向が提示されています。

例えば、学校の年間を通した活動の中で、副担任等として日常の教育実践に携わりながら、メンターである先輩教師や大学から通ってくる教員から指導を受け、かつ週1〜2日は研修に専念し、さらに学校での自らの実践を教師の在り方として厳しく振り返り、一定期間の間に自立した教師として独り立ちできるようにする、といったプログラムです。もちろん、こうしたプログラムのバリエーションは多様にありえます。

ここで何よりも大事なのは、若手教師の資質形成が、単に個人の資質としてではなく、学校という組織の中で協働的にシステマティックに行われることです。そしてそのためには、これまでの、「養成は大学、採用・研修は教育委員会・学校」というような断絶した状況を根本から変え、養成・採用・研修を一体的に進める体制を作り上げなければなりません。これが去年の8月の答申の根本精神だと考えます。

前述のように、今回の「インターン制」にはいろいろ難問があり、まだまだその通り実施されるかどうかは不透明です。かつ、国の教育政策として、一回中教審答申になった政策は、簡単に破棄されたり凍結されたりということにはなりません。政策の継続性、系統性をまったく無視することはできません。

また、答申ではっきりと打ち出された「教職大学院の量質の充実」に関しては、修士レベル化と直ちにつながるものではなく、それ自体は、「学校拠点方式=現場重視」という教員養成改革のモデルとして重要な内容を含んだものと言えます。それに、もともと教職大学院は、前安倍政権のもと教育再生会議の提言によって創設されたものです。

今回の報道で、「これで修士レベル化はダメになった」、とか、「教職大学院は法科大学院と同様もう未来はない」などど即断すべきではないと思います。今後の教員養成、採用、研修をトータルに改革する幅広い視点から、関係者の間で丁寧に議論が進められるよう切望します。
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ジャンル : 学校・教育

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プロフィール

村山紀昭

Author:村山紀昭
長い間、北海道教育大学で哲学を教え、1999年から私大を含めて10年間学長をつとめました。
退職後、教育と福沢に関する月1回の勉強会「教育人間塾」を続けるとともに、文科省の委員会委員や北海道教育委員会のアドバイザーとして、教育政策とくに教師教育政策に関わってきました。
平成26年4月からはフリーなスタンスで教育や福沢について思索する日々です。
趣味は音楽とオーディオ、クラシックと初期ジャズが好き。

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