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報告書「大学院段階の教員養成の改善と充実等について」の解説

[ 協力者会議報告書「大学院段階の教員養成の改善と充実等について」(平成25年10月15日)の日本教育新聞解説記事(10月21日付け)の元原稿を、社の了解を得て掲載します。]

 平成24年8月の教員の資質能力向上に関する中教審答申を受けその具体策を練るためにスタートした協力者会議が、ほぼ1年の検討を経て報告書「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」をまとめました。答申作成に関わり協力者会議の主査を務めましたが、今回の報告書は今後の日本の教育と教員養成にとって重要な意義を持つものと思います。

 <「はじめに修士化ありき」ではない>

 当初の答申が、民主党政権が掲げていた「修士6年制」から発したものであったため、今回の報告書に関しても、ただ大学院での資質向上を謳うものとみなされるかもしれませんが、そうではありません。

 もともと答申自体、高度専門職としての教員の資質能力向上を基本方向としつつ、一気の修士レベル化ではなく「段階的に取組を推進」することを提唱したものでした。学部段階での教員養成の在り方をも視野に入れながら、大学と教育委員会・学校との協働で「大学の教育力を活用して」、新卒採用者と現職の中堅リーダーの両方の資質向上を図ろうとするものでした。

 今、教育現場では様々な難しい課題を抱えて、まさに「学び続ける教師」が求められています。それには、「養成は大学、採用と研修は教育委員会」では済まないのです。

 もちろん、学部養成段階の課題も大きく残されていますが、採用後、初任段階、そして10年後20年後中堅リーダーや管理職になる過程で資質を確実に向上させる仕組みをどう作るかが、答申でも今回の報告書でも最大の課題意識でした。
 
 ですから、報告書は、何が何でも大学院でといった単純な見解に立ってはいません。高度専門職としての教職の高度化は、多様かつ確実に進められるべきです。実際に、和歌山県では、120人ほどの新採用の中から18人を県教委が選抜し、和歌山大学教育学部の全面協力のもと1年間にわたり質の高い研修プログラムを行う試みが始まっています。報告書ではこれを受けて、「学位取得」にかかわらず大学と教育委員会との協働が必要であることを強調しています。

 しかし、そもそも大学に実践的な資質を磨くための「教育力」はあるのかという疑問が当然ありえます。今回の報告書は、この点で、タイトルは「大学院段階における」となっていますが、大学側に教員養成教育の大きな改革を迫る内容になっています。複雑化高度化している学校現場の課題に応える「教員養成教育力の実質」が問われているのです。

<既存修士は原則として教職大学院へ移行>

 大学関係者にとっては、報告書の、既存修士課程については「原則として教職大学院に段階的に移行する」との記述は衝撃的かもしれません。かつその中身として、教科専門の在り方について重大な変更を要請しており、これは平成13年の「在り方懇」でも平成24年答申でも明示されていなかったことです。

 これについて、「専門学問軽視だ」などの見解が出るかもしれません。しかしそうではありません。教員養成を目的とする大学・学部にありながら、学校教育の課題と離れたところで専門学問を研究教育する在り方に根本的なメスを入れているのです。その上で、既存修士について、中学の免許教科に即して立てられた従来の専攻を大括り化し、学校現場の課題と密接した「教育実践研究」の場に転換するよう提案しています。

 報告書はその具体的な内容を詳述せず、今後の展開を各大学の創意ある自主努力に委ねています。

 ただ、言えることは、そこでは教科教育学や教育方法学を軸に教科専門がこれまでとは違った形で授業法や指導法の改善に貢献する道が示されており、新しい実践的な学問を作り上げていく気概を持ってのぞんでほしいということです。

 なお、その際報告書が、高度専門職としての教職の高度化について、一貫して「探究的な実践的指導力の育成」を掲げていることに留意していただきたいと思います。ここに単なる学校現場での体験的訓練に止まらない修士レベルの教員養成の固有の意義があります。

<教職大学院の充実拡充>

 報告書は、既存修士の大改革を前提に、5年間の実績を踏まえて教職大学院の充実と拡充を謳っています。ここでも、中学免許教科をそのまま横滑りで教職大学院に持ち込むことを厳にいましめています。教科や学校種の枠を超え、地域を含む学校課題を構造的総合的に俯瞰する力量の形成を繰り返し訴えています。

 詳細は報告書にゆずるとして、これでは若手教員の教科指導力の強化ができないのではないかとの疑問に関して、報告書は教科の専門学問に傾斜した教育になることはいましめていますが、授業法や指導法の工夫改善のための教育を教職大学院において行うことは当然です。学習指導等に特化したコースでは、これまで以上に若手教師の教科指導力の向上に貢献するものでなければなりません。

 今回の報告書で新たに強調されているのは、校長や教頭等をめざす「管理職特化コース」の設置です。文科省にもこれについての実質的な支援を要請しています。すでに教職大学院を設置済みの大学でも、大いにこれに挑戦してほしいと期待しています。

 なお、教職大学院の拡充に当たって欠かせないのは、入学者の確保です。この点で、地元教育委員会との中身のある協議が不可欠であることは言うまでもありません。

<専修免許取得への実習導入>

 教員養成系以外の国公私の大学院での中高の専修免許取得が60~65%を占める現状の中、専修免許への実習導入は、大学における教員養成の改革として大きな意義を持っています。一般大学の教員養成教育力に対しても、報告書は重大な課題を提起しているのです。

 戦後の開放制免許において、一般大学の教職課程にメスを入れることはほとんど行われてきませんでした。

 今回、事が免許法改正に及ぶものであること、国公私の教職課程での対応が容易ならないことなどを考慮して、「義務化」は避けられましたが、実質的に4~6単位を「必修とすることを促進する」としています。実際、各県教委が採用試験の際、専修免許について実習の有無を問うことが増えていくでしょう。

 ここでも問題は、各大学の対応です。学部の教育実習のレベルを超えた中身のある実習をどのような体制で実施していくか。かなりの難問を含んでいると思われますが、ここでこそ、国公私の大学間での連携・連合が有効です。すでに兵庫県では兵庫教育大学を中心に、そのための国公私の連携組織が作られています。

 以上、報告書のポイントをかいつまんで紹介しましたが、大学院段階の教員養成にとりあえず課題を限定しているとはいえ、ある意味で、かつてない根本的な教員養成の改革を大学に求めていると言えます。そしてそれは、報告書が去年の答申を引き継いで一貫して強調している、「大学と教育委員会との協働による養成・採用・研修の一体的改革」なしには成就しえないものであることをぜひとも根底に据えて理解していただきたいと思います。
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Tag:教育  comment:1 

Comment

uto-uto URL|採用の問題
#AkT6zNNU Edit  2013.11.24 Sun12:19
初めまして。
twitterでは、お世話になっております。

大学では、指導力・実践力等、多岐にわたって取り組んでいるところも多いと思います。
しかしながら、当然ながら大学には個性があり、私立大学などでは、教員採用試験に合格するためのカリキュラム編成になっているところもあります。(→しかも、大学入試時に面接だけで合格している)
採用試験合格100%が売りの私立大学など地方には存在します。
そして、採用後に数年で離職という事実もあります。

「養成・採用・研修」の一体化がうたわれていますが、「採用」についての課題も考えていかなければならないのではないでしょうか。

かなり言葉足らずになりますが、現在私は、企業を辞めて教員を目指す、通信で免許所得した学生や社会人の採用試験対策をしています。
同時に、現在所属している国立大学の教員養成にも関わっています。→附属で教育実習など見ています。

その視点から見えてくることは、正規教員を目指す者は、多くの時間をかけて採用試験勉強をするけれど、
その採用試験勉強の内容が、大学で学んだこととかみ合っていないという現実があるとということです。

採用試験内容が、一般教養なし、教職も答申や法規、人物重視となって来ると、実践経験のない社会人の方でも合格されます。免許状取得前、教育実習前に、民間の方も合格します。
もちろん、採用方法は都道府県格差があります。

すみません、書きたい事が上手くまとめられませんが、
採用試験に合格するためのカリキュラムの大学の学生、経験のない社会人が4月の初任の段階で、教職員としての質が保障されているとは思えないのです。

採用方法の問題は、修士6年制の問題のように、考えて行かなければならないと考えます。
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プロフィール

村山紀昭

Author:村山紀昭
長い間、北海道教育大学で哲学を教え、1999年から私大を含めて10年間学長をつとめました。
退職後、教育と福沢に関する月1回の勉強会「教育人間塾」を続けるとともに、文科省の委員会委員や北海道教育委員会のアドバイザーとして、教育政策とくに教師教育政策に関わってきました。
平成26年4月からはフリーなスタンスで教育や福沢について思索する日々です。
趣味は音楽とオーディオ、クラシックと初期ジャズが好き。

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