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アクティブラーニングと次期学習指導要領の方向性について

[ 以下の文章は今年1月に書いた短文で、この後、安彦忠彦氏や石井英真氏の論稿などを含めて検討したものを書く予定でしたが、他の仕事が多忙でまとめのための時間が取れないので、とりあえずこの問題群に関する導入部分として掲載します。]

次期指導要領の検討を中教審に諮問した昨年末の諮問文に「アクティブ・ラーニング」なる用語が数カ所に用いられ、にわかに話題を呼んでいます。

もともと数年前に、伝統的な講義に終始し、学生が主体的に学ぶ力を育てていない大学教育の現状に対して、アメリカの一部の大学で行われた授業法のネーミングでした。これが、小〜大学までの授業法として次期指導要領の重要なキーワードのように提起されたわけです。

早くも少なからぬ学校で、校長がアクティブラーニングについて課題にしなければと力説し始め、学校の研究課題にするところも出ているようです。また、われこそはアクティブラーニングの本流だみたいな自己宣伝をする人も出ているようです。

中身の吟味なしのこういう安易な追従は困ったものです。そもそも、今回諮問文で出ているアクティブラーニングとは極めて広い概念であり、必ずしも明確に定義されたものではありません。

今回の諮問は、文科省内で、1年以上にわたり教育学者を中心に精力的な検討をした結果として行われています(座長安彦忠彦氏、他に無藤隆氏、市川伸一氏等)。そのまとめは、去年3月末に、長大な「論点整理」としてまとめられています(必ずしも「論点整理」になっていなく諸意見の紹介の面も強いのですが。なおこれにはアクティブラーニングとの語は使われていません)。

この論点整理を全体として見ると、今回の提起が、従来の指導要領の個々の教科の内容の列挙の弱点に代わって、育てるべき子どもの資質能力のトータルな視点からどのように学ぶのかの視点を柱に据えるという大きな枠組の中で行われていることを見逃してはなりません。

「何を教えるか」だけでなく、「どのように学ぶか」の視点です。(淺読みの人は、これを「これからは何を教えるかでなくどのように学ぶかだ」と歪めてしまいます。何を教えるか抜きにどう教えるかはあり得ないのは、教育論では決して忘れてならないじことです。)

実際にこれをきちんと次期指導要領に盛り込むことは容易でないと思いますが、私見では、容易ならない課題にしても、キリなく増大する、各教科ごとの教えるべき内容の提示ではもう限界であり、それとセットに学習・教授法について提起するということには重要な意義があります。

しかもその場合の学習・指導方法は、単なるスキルでなく、子どもの学びの実際に即した基本的一般的授業法でしょう。

今後、1年ほどで中教審の部会等で次期指導要領の指針がまとめられ、その後教科書作成、さらに各学校での先行試行が行われます。

これまでにない大きな変更が予想されるなか、各学校と先生方は、早めにその動向について自前の検討をする必要があると思います。

少なくとも、諮問文全文、検討会の論点整理、国立教育政策研究所の案(21世紀型能力論など)について、テキストに即した検討が不可欠です。

関連し、検討会の座長を務めた教育学者の安彦忠彦さんが、この論点整理と今後の教育方向について、かなり突っ込んだ見解を近著『コンピテンシーベースを超える授業づくり』(図書文化社、2014年12月)で展開しています。これもぜひとも参照し、広く教育界で議論が進むことを期待しています。実践者も研究者も。

実践知重視だからといって、こうした大きな枠組の政策論を回避してはならないでしょう。教育論で議論や論争を避けるのは良くないと思っています。実践をやっていくなかで理論の相克を乗り越えられるというものではありません。理論は理論としての吟味が不可欠です。
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プロフィール

村山紀昭

Author:村山紀昭
長い間、北海道教育大学で哲学を教え、1999年から私大を含めて10年間学長をつとめました。
退職後、教育と福沢に関する月1回の勉強会「教育人間塾」を続けるとともに、文科省の委員会委員や北海道教育委員会のアドバイザーとして、教育政策とくに教師教育政策に関わってきました。
平成26年4月からはフリーなスタンスで教育や福沢について思索する日々です。
趣味は音楽とオーディオ、クラシックと初期ジャズが好き。

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